きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「もういい、って。
 いい加減にしてよ、あの婆さんが、とか。
 適当に話作ってるんじゃないの」

「もう1杯だけ、飲めたらさ、全部思い出すと思うんだよ、婆さんの名前とか」

「いや、飲まさないから。
 最後まで全部話したら、飲ましてやるけどね」

 シーナが冷たく、袖を振り払うと、女はようやく本腰を入れて話し出した。
 これ以上は引き伸ばせない、と悟ったのだろう。 
 酒臭い息を吐いて、掌をシーナに向ける。
 

「あたしが働いていたとこの婆さんが、何か不思議な力を持ってて、こう手を当てて病人を治す女で。
 治療士の看板はあげてないのに、来るのは色々と訳ありみたいな奴が多かった。
 多分、紹介とかで来てるんだろうけど。
 そこにあのデイヴがよく、高熱を出した娘を助けてくれ、って来てたんだ」


 デイヴ・カーターは本邸に雇われている。
 イングラム領で、1番の治療士だ。
 そのデイヴが年寄りの女に、リデルを助けて、って?


「あたしは元々イングラムの女だけど、婆さんもデイヴもよそ者だ。
 15年くらい前に住み着いた時は、デイヴは独り身で。
 それから2年くらいして急に、5歳くらいの娘が出来ました、だから」

「それ……リデルは養女?」


< 139 / 225 >

この作品をシェア

pagetop