きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

35 シーナ

 シーナが、リデルが魔女だと言われている、と告げると。
 男は親指を立てて店舗入口を示し、先に出て行った。
 そのままシーナが付いてきているか、振り返って確認もせずに、往来の賑やかな大通りではなく脇道に入っていく。


 男性の早足で歩くので、シーナは小走りで付いていくのが精一杯だ。
 リデルのように手を繋げ、とまでは言わないが。
 こちらに対する気遣いが全く無い。
 このようにシーナは男が見せる行動に憤慨しているが、さっき彼女がマントを掴んだ後に、そこにゴミが付いてしまったかのように、男が忌々しげにぴんと指で弾いた事や。
 ここに来るまで、男が一言も発していない事にはまだ気が付いていない。
 

 南区大通りから1本入った、表通りに面する様々な商店の裏店が続く細い裏道を抜けても、男はまだ歩く。 
 今日は男に会うから、シーナは少し高めのヒールの靴を履いてきた。
 足が痛くて、いい加減にして、と言いたい。
 ここからはもう1歩も動かないと声を張り上げようとしたところで、男は立ち止まり、シーナに振り向いた。


「ここで、話を聞く。
 彼女について、誰が何を言ってる?」

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