きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 その想像に足元は震え、頭のなかはいつ逃げよう、いつ叫ぼう、と助かる算段でいっぱいになった。


「女の名前は?」

「し、知りません。
 でもっ! リデルが子供の頃に通っていた、魔女の所で働いていた女です!
 カーターさんなら知ってると思いますっ!」

 シーナは、全てあの女のせいにして、早く逃げようと思った。


「じゃ、じゃあ、わたしはこれで……」

 シーナがそう言いながら、後ろを向いて去ろうとした時。


「待てよ、ワトリー……いや、本当はザック、だったか」


 これから男によるシーナへの断罪が始まろうとしていた。


  ◇◇◇


 自分はシーナ、と名前しか言ってない。
 ワトリーなんて言ってない、それを。
 ザック、と言われて足が止まる。
 同時に心臓も止まりかけたシーナだ。

 13歳で領都に出てきてから、捨てた名前だ。
 今の生活圏では、彼女はシーナ・ワトリーとして知られている。
 専門高等学園は高額ではないが学費を払うからか、入学審査もおざなりで、願書に書いた名前で通うことが出来た。
 どうして、この男が自分の本当の名前を知っているのか、見当もつかないシーナだ。


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