きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 彼にとっての聖地、愛するリデルが住むイングラムに戻ってきてからは、あの女の事は、それ程思い出さなくなっていた。
 テリオスは、このピアスを着けるとミネルヴァの魅力に誘惑されない、と言っていたが。
 ピアスが持つ魔力に抗う力は、魅了だけではなく憎悪からも、ジェレマイアを護ってくれた。
 きっと邪な想いに対する抵抗力が備わっていたのだろう。


 俺にはリデルが居る。
 彼女が想いを受けとめてくれたから、あの夢はもう見ないだろう。
 許してはならない、という神の呪いから俺は解放された。
 リデルが居るなら、俺は善い人間になれる。


 その想いはジェレマイアの中で、揺るぎ無く彼を支えてくれている。
 例えリデルが北から来た魔女であっても。
 彼女から与えられている癒しが、魔力からのものであっても。
 ジェレマイアの想いは変わらない。



「いつも、そこに居るのね。
 何処の地図を見ているの?」

 本屋で彼女と待ち合わせをするようになって、3日目。
 決行は今夜、と決めていた。

 昨日はある女の断罪を行ったが、ジェレマイアの記憶には既に無い。
 ただ彼は、あの日本邸に戻ってからマントを処分した。
 ゴミが付いてしまったからだ。


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