きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「いつものマントと、違うのね。 
 今日のマントは、内側に毛皮が貼ってるの?
 それに、荷物持って、何か買ったの?」

「いや、たいした買い物じゃない。
 それより、このマント似合わないかな?」

「そんなこと無い……すごく暖かそうだし……
 それに何着ててもジェイは素敵だよ」

 側で聞いていたら、砂を吐きそうな台詞も、結ばれたばかりの恋人同士なら仕方がない。
 今が1番楽しい時なのだから。


 これまでと同様に、ふたりで手を繋ぎ、リデルの家まで歩く。
 それも今日が最後。
 今度こそ、次はいつ会えるのか、分からない。
 それを思うと、ジェレマイアは他はどうでもいいから、このままリデルを拐って、何処かへ行こうかと迷う。
 それでも、ジェレマイアはリデルに誓ったのだ。


 傍に居てくれるなら、どんな苦労も厭わないし、全力で幸せにする努力を続ける、と。 
 その苦労は自分だけがすればいい。
 その努力はこれから始まる。
 リデルには、全てを整えてから……


「ジェイ、今日はあまり話さないね?
 毎日迎えに来てくれるのは嬉しいけど、無理はしてない?
 胃痛は治まった?」


 リデルが側に居るのに、思考の海を漂っていた自分を内心罵って。
 ジェレマイアは、繋いだ彼女の手を口元に持っていき。
「痛みは無くなったよ、心配させてごめん」そう言って口付けた。

 そう、今痛むのは、腹ではなくて胸だ。
 もうすぐリデルに告げる別れを思うと、胸が痛い。


「今日はデイヴに挨拶したい」



 唇ではなく手に落とした口付けだけで頬を赤くするリデルに、ジェマイアが囁くと。
 何度もリデルが頷いた。


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