きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「あぁ、お帰り。
 今日は一緒に、か」

 デイヴはまるで、リデルがジェレマイアと待ち合わせをして送って貰っていた事を知っていたかのように、驚きもせずにふたりを迎え入れ。
 ジェレマイアの髪が赤く変わっている事にも触れなかった。


「今日は、って……」

 リデルが思わず口ごもったのを引き取り、ジェレマイアが頭を下げた。


「デイヴ、挨拶に来るのが遅くなってすまない」

「……構いません、そろそろいらっしゃるだろうとは思っていましたから。
 健診をしろ、と命じられたのでね」

「あぁ、今週末だから……」


 デイヴとジェレマイアの会話は続くが、その感じはリデルには想定外だった。
 ジェレマイアと一緒に帰宅した自分に、デイヴは怒るか喜ぶか、そのどちらかだろうと思っていた。
 
 
 そのどちらでもない、変に静かな雰囲気に困惑しながら、リデルはふたりにお茶を入れようと、キッチンの方へ行こうとしたが、その腕を掴んだのはジェレマイアだった。


「ごめん、リィ、時間があまり無い。
 君も一緒に話を聞いて欲しいんだ」

「……分かった」

 さっきデイヴが口にした『今週末の健診』という単語も実は気になっていて、時間が無いと言われた事で、もしや……と嫌な予感に襲われる。
 ジェレマイアはもしかしたら、病にかかって……

 
 さっきからひとりで、ぐるぐると思考を巡らす娘の様子を、デイヴがなんとも痛々しい表情で見ているのだが。
 どうしても現在のリデルは父よりも恋人の方ばかりを気にしていて、デイヴがどんな思いを抱えているのか想像もしていなかった。


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