きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「見合いが嫌だと仰られたのですが、わたしには関係の無い事でございます、とお返事させていただいただけです。
 まさか、それだけでイングラムを出ていかれるなんて思いもしておりませんでした」

 ご領主様に呼び出された娘は、そう答えた。 
 息子は好きだったかも知れないが、娘の方は身の程を弁えて、年頃になると本邸には姿を見せなくなっていたので、関係が無いと言われてしまえば、それ以上に追求は出来ない。 
 

 伯爵は確かに息子を毛嫌いしていたが、彼は容姿だけではなく、その性質も父親とそっくりだった。
 何故なら、伯爵自身が同様で。
 初めての顔合わせから妻に惹かれていたのに、心を開かない彼女に対して拗らせて、有名な
「お前を愛するつもりはない」を宣言して、白い結婚になってしまった。
 そこから慌てても挽回は出来ず、妻からの孕み腹の提案も、好きだった男の姪と息子の婚約も。
 その屈辱を受け入れる程、妻に執着していたからだ。


 重すぎる執着の末、その対象を失ったあいつは、もう戻らない。
 何処かで野垂れ死んでいるかも知れないが、手を尽くしてその行方を探し回る程の愛情は、結局持てなかった。

 そう結論付けた伯爵は、予定されていたウエストヒルの娘との養子縁組を取り止め。
 新たに縁故の男子を探すことに決めた。


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