きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「リデルはまだ知らないのかな、シーナ先輩は領都から引っ越したみたい。
 あの花屋は彼女の家じゃなくて、伯母さんの家で居候してたの。
 仕事も辞めて、今は何処に居るのか分からない。
 それでね、笑えるのはあんなにもてるのを自慢してたのに、誰もあの人を探そうともしていないの。
 クラークだって、東の小売店に飛ばされたみたいだし、あのふたり消えちゃったね?
 ざまあみろ、じゃない?」



 終始ご機嫌だったシェリーと別れて、リデルは帰路に着いた。
 クラークにしろ、シーナにしろ、リデルには本当にどうでもいい人になっていたので、その行方を考える事もない。
 既に頭の中は、夕食までの段取りに切り換えられていた。


 そして、我が家に近付いた時に。


 まだまだこの時期の夕暮れ時は肌寒いのに。
 白いシャツに乗馬ズボンを履き、長い髪を頭の高い位置で1つにまとめ、近くの木に馬の手綱を結ぶ、女性の姿が見えた。

 直感で、彼女は父ではなく、自分に会いに来たのだとリデルは悟った。
 同時に、女性の方もリデルに気付いて、結び終えると、こちらに向かってきた。


 これまで会った事がない、背が高く、きびきびした動きの若い女性。
 好感の持てるタイプのひとだが、彼女の方はどうか分からない。



 そのひとは、ジェレマイアに似た銀色の髪を持ち。


「はじめまして、わたくしベアトリス・ウエストヒルと申します。
 貴女がジェレマイア様の恋人のリデル・カーターさんね?」

 と、リデルに向かって、綺麗に微笑んだ。
 
 
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