きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

40 ベアトリス

 17歳のベアトリス・ウエストヒルに、イングラム伯爵家の後継者だったジェレマイア・コートとの婚約話が持ち上がったのは、あの笑える卒業パーティーから2ヶ月以上が過ぎた秋の初めの頃だった。 

 王立貴族学院の女子寮に、父のグラハム・ウエストヒル男爵が面会に来て、それを告げた。


「先週、ご領主様から打診が来た。
 お前を養女に貰い受けたい、とな。
 その上で、ジェレマイア様と婚姻させるそうだ。
 これは決定事項なので、その心づもりをしておきなさい」

「はぁ……なるほど」

「なるほど、とは何だ?
 嫌なのか?」

 決して嫌ではない、むしろ飛び上がる程嬉しい話だ。
 だが、それを父の前で見せる事はしない。
 こうして反応が薄いと文句を言うくせに、ベアトリスが感情をあからさまに見せれば、はしたないと言うに決まっている。

 
 ご領主様からウエストヒルに来た話は、単にジェレマイアに嫁入りする話ではなく、養女と言った。
 つまり、あの男を勘当せずに嫡子のままにして、自分を伯爵に立ててくれると言うことか、と理解して。
 それがベアトリスには飛び上がる程嬉しい話だったのだ。


「まぁ、ジェレマイア様には色々あったがな。
 あれほどの美男子だ、お前も素直に嬉しいと言えば良いのに」

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