きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 あの男が美男子だから、何だと言うのか。
 ベアトリスにとっては何の意味もないジェレマイアの容姿を、女はそれだけで喜ぶと信じる父グラハムを、彼女は冷めた眼差しで見ていた。


 あの男は、あのミネルヴァ・ロバーツに篭絡された男、としか今は認識していない。
 入学当初は彼は次期領主様なので、顔を覚えて貰おうと挨拶も何度かしたが。
 ただ頷くだけで何の言葉もなく、その目が自分を見ていない事に気付いてからは近寄らないようにしていた。


 彼がテリオス殿下の取り巻きの1人だったり、裕福な伯爵家の次期当主だったり。
 何より男性の父も褒めるその容姿で、憧れている女生徒は多く居たが、誰も近寄らせて貰えなかった。

 それ故、去年からミネルヴァに贈り物をしている姿を見かける度に、
「人間らしい感情も持っていたんだ、良かった良かった」と思っていたベアトリスだった。



「今はまだ、王都邸にいらっしゃると聞いています。
 ご挨拶に伺います?」

 あの卒業パーティーで同時にやらかしたテリオス殿下は、既にシェイマスの大聖堂に預けられたが、ジェレマイアはまだイングラムに帰っていないと聞いている。


「いや……今回の養子縁組は奥様には内密に進められている。
 お前も知っての通り、奥様は……少し難しい御方だからな。
 顔出しは無用、との事だ」


 奥様のイングリット・コートが少しではなく大層難しいのは、会ったことがないベアトリスも知っていた。
 何せ奥様は、ジェレマイアを生むと直ぐに赤子を置いて、ひとり領地を離れて王都に住まいを移した。 


< 172 / 225 >

この作品をシェア

pagetop