きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 卒業パーティーの1件で、大いに顔を潰されて社交界からも足が遠退いたと聞くのに、未だに領地へ帰ろうとなさらない。
 自分に恥をかかせた息子ジェレマイアを再教育すると息巻いて、イングラムに戻すのを反対されたのは、一族内では有名な話だった。

 ジェレマイアが破棄したカートライトとの婚約も、実はご領主様ではなく、奥様の肝煎りだそうだ。
 恐らく今回の養子と婚姻の縁組の、そのどちらにも横やりを入れられたくないので、父はご領主様から王都邸には近付かぬよう命じられているのだろう。


 では、あの男がこちらに居る間は挨拶は無しだな、とベアトリスは理解した。
 となれば、顔合わせまでは、まだ猶予はある。
 それまでに、と。
 ベアトリスはグラハムの後ろに立つクリストの顔を見た。

 彼は能天気な父を補佐するために、それ専門の人間と繋がりを持っている。
 彼が居る限り、ウエストヒル家は間違いを起こさず、ご領主様から見限られる事はない。
 彼ならきっと、ベアトリスが寄越した視線の意味を分かって、彼女の代わりに調べてくれるはずだ。
 


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