きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

41 リデル

 ジェレマイアの名前を出して、その上で自分との関係を口にして、自己紹介をしてきたベアトリスの事を、最初は彼からの知らせを携えた使者かも、と期待したリデルだった。
 

 だが、その期待は外れた。
 このひとは、例のジェレマイアの縁談のお相手の、遠縁の貴族令嬢様だった。


「もう少しだったから、諦めたくなくて。
 わたくしは田舎育ちだから、馬を駆る方が早く貴女に会える、と急いで来ちゃったの。
 今ならまだ……次の後継者が決まるまでに、ジェレマイア様が戻ってくれれば、間に合うの。
 ご迷惑かな、と思ったんだけど、貴女しか頼れないのよ」


 今、初めて会ったひとなのに。
 まるで、昔からの友人のように。 
 ずいぶん砕けた物言いをするひとだ。

 諦めたくない、と彼女がリデルに訴えるのは、ジェレマイアの事ではないのは、直ぐに分かった。
 ご領主様との養子縁組と、ジェレマイアとの婚約を、『契約』とベアトリスが言ったからだ。
 多分、このひとが本当に欲しかったのは、次期領主の座であって、ジェレマイアとの結婚はそれに付いてくるもの、と割りきっているように感じた。
 


「王都では皆が、普通にそれを受け入れてた」

 あの日、ジェレマイアから聞いた言葉を思い出す。
 自分が受けた理不尽を、何でもない事のように話す彼が言ったのだ。
 リデルには、ジェレマイア以外の貴族の知り合いはいない。 
 だから、彼等貴族が何を思い、どう行動するか、どんな風に会話をするかも知らない。 

 このひとは、わたしと変わらない年齢で、こんなに綺麗で、きっと頭もいいんだろう。
 それなのに、どうして……
 これがジェレマイアが言う貴族の普通なのだろうか。
 
 
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