きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 目の前のご令嬢は平民のリデル相手に、ずいぶん明け透けに本音を明かしているような印象を与えるけれど、それが真実かどうかは分からなくて。
 これまでは人からお願いされたり、弱みを見せられると、直ぐに絆されて流されてしまっていた。
 その結果、周囲に迷惑をかけてしまう事だってある、とシェリーのドレスの1件で骨身にしみたので、リデルも少しは学習した。
 取り敢えず、今はこのひとの勢いに飲まれない様にしようと決めた。


「ウエストヒル様は、何か誤解をされているようです。
 わたしはジェレマイア様の恋人ではありませんから、現在どちらにいらっしゃるのか、存じ上げてはおりませんが」


 愛しいひとと同じ顔をしたご領主様から呼び出されて、きつい言葉で追求されても、知らぬ存ぜぬを押し通したリデルだ。
 ジェレマイアとの関係を疑われるのは2回目なので、表情も変える事無く、答えることが出来る。
 何より、目的地は知っていても、今彼が何処に居るのか、知らないのは本当だ。


 リデルの否定を聞いて、ベアトリスがずっと浮かべていた綺麗な微笑みが消えた。
 彼女は銀髪碧眼のいわゆる『コートの色』を持っていて。
 本人は気付いていないかも知れないが、笑顔を消してしまえば、その色とその整った顔立ちで冷たい印象を与える。
 それはジェレマイアや、色は違っていてもご領主様と通じるものだ。


< 178 / 225 >

この作品をシェア

pagetop