きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 ベアトリスは、とうとう『認めて許す』『あの男』『お前』と言い出した。
 生まれながらに人を見下しているのはあなた様ですよね、と。
 反対にリデルは冷静になっていく。
 いつまで頭を下げて、話を聞かなくてはいけないんだろう、とも。


「ずっと、ずっと我慢してきた。
 わたくしのまわりには、馬鹿な男ばかりだった。
 父親は気がいいだけで、助けがなければ、まともに仕事が出来ないの。
 兄はそれに輪をかけたぼんくらなのに、家を継ぐ。
 わたくしだったら、もっとうまくやれる、とずっと思っていた。
 ご領主様に、もっと良い提案も出来るの。 
 ……わたくしが領主になれば、それが実現して、このイングラムがもっと良くなるのを見たくないの?」


 もう付き合いきれなくなって、リデルは頭を上げて、驚いた。
 ベアトリスの瞳に浮かぶ涙を見たからだ。
 だが、それは一瞬で。


 自分の涙を見られたことに気が付いたベアトリスがリデルに笑ったが、それは嫌な気持ちにさせる笑みだった。
 最初に、このひとが見せた綺麗な微笑みは、リデルを簡単に自分の思い通りに出来る女だと思っていたからなのだろうか。


< 181 / 225 >

この作品をシェア

pagetop