きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 そこまでは、いわゆる表側で。
 この先から関係者以外立入禁止のエリアに入ったことは、花器に入れられた花やカーテンなどの装飾が徐々に華美に変化していく事で伺い知れた。
 大聖堂には信仰心の他に、それに伴う莫大な献金も国中から集められているのは誰もが知っているのに、口外しない公然の秘密だ。


「ここで、しばらくお待ちを」

 プライベートエリアに入ってからも、何度も角を左右に曲がって、やっとたどり着いた部屋は、応接室と言うよりも密談に使われそうな趣きで。
 小さなテーブルを挟んだ1人掛けの肘付きの椅子が2脚だけ置かれた少々狭めの部屋だった。
 


「待たせた、マイア」


 どれ程の時間を待ったのか。

 去年まで、幾度耳にしたか分からない、その台詞を。


  ◇◇◇


 あの卒業パーティー以来のテリオスは、見た目はそれ程変わってはいないが、彼を穏やかに見せるあの微笑みは、もう浮かべていなかった。


「お前、痩せた?」

 約8ヶ月ぶりに顔を合わせた開口一番が、これだ。


「よく来た」も「会いたかった」も無い、これがテリオスだ。
 なので、ジェレマイアも挨拶抜きでそれに合わせる。


< 191 / 225 >

この作品をシェア

pagetop