きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

44 ジェレマイア

「俺には荒事は向かないし、やりたくないからね」 

 テリオスは、よくそう言っていた。
 その言葉通り、学院の時間割りに組み込まれている剣術の授業を、彼は手を抜いて受けていた。


「マイアはどうして、そんなに真剣に受けているんだ?
 イングラムには有名な騎士団があるだろ?
 お前は、現場で指揮する人間が机上で陣形や作戦を組み立ててくれたのを、黙って頷いて、命じるだけでいいじゃないか」 


 テリオスは役割はお互いに心得ていた方が楽だ、とも言っていた。

 お前達は、あくまでも同じ学年の取り巻きであって、決して側近ではない。
 卒業後も王城に勤められると思わないように。
 側近と言うのは、自分の代わりに仕事をさせるもので、能力が高くないといけない。
 依って、自分と同じ年齢のお前達ではなく、自分よりも鋭く豊かな見識と知識、場数を踏んだ年上の人間を側近に選んで働いて貰い、楽をする。


 自分は御輿に担がれていればいい、それが俺の役割だ、と語っていた。

 ……勿論ジェレマイアの前だけで。


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