きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
だから……父さん、どうか、今も『それ』を察して欲しい。
明日になれば、明日の朝になれば。
「クラークにふられちゃったの」と軽い調子で言えるから。
そう決めていたのに。
今夜だけは、学園で過ごしたクラークとの楽しかった日々の思い出にひたり。
明日からはそれを忘れて、また新しく始めるの、と笑おうと決めていたのに。
いつもと明らかに違う娘の様子に気づいているだろうに、父は何も尋ねない。
ようやく食事を終え、2人分の食器を重ねるリデルにデイヴが話し出した。
「明日の夜、若様がこちらにお戻りになる、と聞いた」
「……夜に、何故?」
「……人目につきたくないのだろうな。
事の経緯は、お前も知っているだろう。
ご領主様は若様を、恥じておられるようだ」
「……」
その知らせに、何も返せなかったけれど。
父の語尾は疑問文ではない。
その通り、リデルも。
遠く離れた王都で吹き荒れた嵐の経緯は、知っている。
王立貴族学院で吹き荒れた嵐。
それはある男爵令嬢が第2王子殿下や、そのご友人の高位貴族令息達を誘惑して、巻き起こった嵐。
我が領の若様。
次期イングラム伯爵閣下になるはずだった若様。
ジェレマイアは、その令息のひとり、だった。
明日になれば、明日の朝になれば。
「クラークにふられちゃったの」と軽い調子で言えるから。
そう決めていたのに。
今夜だけは、学園で過ごしたクラークとの楽しかった日々の思い出にひたり。
明日からはそれを忘れて、また新しく始めるの、と笑おうと決めていたのに。
いつもと明らかに違う娘の様子に気づいているだろうに、父は何も尋ねない。
ようやく食事を終え、2人分の食器を重ねるリデルにデイヴが話し出した。
「明日の夜、若様がこちらにお戻りになる、と聞いた」
「……夜に、何故?」
「……人目につきたくないのだろうな。
事の経緯は、お前も知っているだろう。
ご領主様は若様を、恥じておられるようだ」
「……」
その知らせに、何も返せなかったけれど。
父の語尾は疑問文ではない。
その通り、リデルも。
遠く離れた王都で吹き荒れた嵐の経緯は、知っている。
王立貴族学院で吹き荒れた嵐。
それはある男爵令嬢が第2王子殿下や、そのご友人の高位貴族令息達を誘惑して、巻き起こった嵐。
我が領の若様。
次期イングラム伯爵閣下になるはずだった若様。
ジェレマイアは、その令息のひとり、だった。