きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 テリオスは、もう1枚紙を出して、またもや何かを書いて見せた。
 それに思い当たる節があるジェレマイアは、ここは素直に頷いた。

「リデルが持っている、金属製の護符に刻まれている」

「やっぱりか……これはグーレンバイツのベージルーシュ侯爵家の家紋を簡素化したもので、家族に贈り物をする時に彫ったり、又は描いたりするらしい。
 金属製の護符は、あの国では無事に1歳の誕生日を迎えた御祝いで贈られるものだ。
 13年前、侯爵と第2夫人との間に生まれた娘、つまり我が国では庶子と呼ばれる立場の、当時4歳の娘の行方が分からなくなった。
 その娘の名がリデル、黒髪に茶色の瞳をしたリデル・フォルロイ・ベージルーシュだ」

「侯爵……リデル……フォルロイ・ベージルーシュ……」

「娘はある日、子守りと侯爵邸から姿を消した。
 以降、帝国中、北大陸中を探しても見つからなかった。
 母親は鬱になり、やがて亡くなり……
 彼女本人は『癒し手』の力を持っていたのに、他人には使えても自分を治す事は出来なかったんだ」

「癒し手……」

「俺が調べたのは、ここまで。
 ここからどうするのかは、お前が彼女と決めればいい。
 リデル・カーターを『癒しの聖女』と呼ぶ人間もいるらしいな。
 だが、彼女本人にはその力は使えない。
 お前が支えてやらないと……」



 第2王子に取り巻きにされて、6年以上が過ぎ。

 ジェレマイアは初めて彼に
「大丈夫です」と言わなかった。


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