きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「これは母さんがお前を守りたいと遺した護符だよ。
 お前ももう赤ちゃんじゃない、これからは自分で持っていなさい」

 
 父が渡してくれたそれは、金属のプレートのようなもので、短めの金鎖に通されていた。
 リデルが知るサンペレグ聖教会で渡される、護符と呼ばれているものは木札で、こんな感じではない。

 戸惑うリデルの首にその金鎖を掛けながら、デイヴが優しく娘の頬を撫でた。


「ご覧、ここにお前の名前が彫られている」

 確かに、デイヴが指差した護符の表面には、何かの文字と印のようなものが彫られているが、学校で読み書きを習っているリデルにも、それは見たことがないものだった。


「これがわたしの名前? 何、これが字なの?
 こんなの読めないよ?」

「北の方の国の文字だ」

「北の方の国が、母さんの国なの?」

「いや、違う違う!
 頼んで彫って貰ったんだ。
 リデル、お守りはやたらと人に見せる物じゃない。
 お前にとって大切な人になら、見せていいよ」

 北の方の国が、とリデルが尋ねた途端に、やたらに強く否定したデイヴの不自然さに幼い娘が気付けるはずも無い。




「ジェレミー、見て見て、特別に見せてあげる。
 他の人には内緒にしてね」


 その後、機嫌が直ったリデルは珍しい金属の護符を、彼女の黒い髪を好きだと言ってくれる、ジェレマイアにだけ見せて自慢した。


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