きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 治療院近くのその本屋は、たった3日だったけれど、ジェレマイアと待ち合わせをした店だ。
 あの頃彼がいつも待っていた、地理関係のコーナーを見たくないリデルはそこを迂回して。
 魔術、魔力、魔女などの文字が記された背表紙を探して、広い店内をさ迷うように歩いた。

 店員に聞けば早いのだろうが、今日カウンターに居たのは治療院にも通っている男性で。
 彼にはそんな本を探しているのを知られたくないリデルは、自力で探すしかなかった。

 当然、それはとても疲れるもので。
 今日は、この書棚のところまで、と決めたリデルはやっと足を止めて。
 1番上の段から探そうと見上げた……その時。



「熱心に、何を探してる?」

 不意に後ろから声を掛けられて、背後から伸びてきた大きな手に両目を優しく塞がれて。
 声も出せない間に耳元で、見えない誰かが甘く囁くのを、震えながら聞いた。


「今日は、あの場所には寄ってくれないんだ?」



 
 彼女に気付かれぬように、そっと背後に近付いて、両目を塞いで。

 その声を聞いて、身体を強張らせたリデルに、性懲りもなく
「驚いた? すごい顔してる」と。

 あの日と同じようにふざけて。

 再び、泣き顔のリデルから鉄槌を下されたのは。



 伸ばした髪を黒く染めたジェレマイアだった。


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