きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

46 リデル

 約半年ぶりに会えたふたりは手を繋ぎ、リデルの家までの道を歩く。

 ジェレマイアは今日の昼過ぎにイングラムに戻ってきて、リデルの終業時間まで時間を潰して、治療院の向かいの店の前で彼女が出てくるのを待っていたらしい。

 道を隔てた正面で待っていたし、季節柄マントも着ていないので、リデルも直ぐに気付くかと思ったのに、彼女が本屋を目指して斜め横断したので慌てて本屋に入ったそうだ。


「フード無しで大丈夫だったの?」

「何人かに声を掛けられたけど、外国人のふりをしたから。
 よく考えたら遠目にしか見ない俺の顔なんて、皆はちゃんと知らないんだよ。
 なのに、あんなに必死に顔を隠してた俺は、自意識過剰な怪しい奴だった」


 あー、その通りかも、とそれを聞いて、リデルも納得した。 
 確かに、正面からご領主様家族の顔を見られる領民は居ない。
 皆、頭を下げて通り過ぎるのを待つ。
 髪を黒く染めコートの色を隠したジェレマイアに声をかけた人は、単に彼の容姿に惹かれた女性達だったのかもしれない。


「真剣に本を探してるみたいだったから、声は掛けずに付いていったんだ。
 何を探していたの?」

「……その話は後でね。
 それより貴方に伝えないといけない話があるの」

「俺にもリィに話したい事あるけど、いいよ、先を譲る。
 それってどんな話?」

「悲しい話と、少し嬉しい話……それと一緒に考えて欲しい話の3つ」

「……じゃあ、悲しい話から始めて。
 一緒に考える話に時間をかけたい」




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