きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 そう、今なら「ジェレマイア様、お加減はいかがですか?」と看護士の顔をして、会えるだろう。



 己が手にしていたものを、全て失った彼が。


 ジェレミーが苦しんでいるのなら。
 痛みを我慢しているのなら。



  ◇◇◇



 邸の馬車寄せには、本邸の家令リーブスが立っていた。

 彼はリデルが出入りしていた頃と寸分違わぬ表情で、彼女を迎え入れた。

 その頃とは何かひとつ違うとすれば、それは馬車を降りるリデルに手を差し出した事だろうか。
 リーブスは大人の女性として、リデルを扱ってくれたのだ。


 だがお互いに挨拶もそこそこに、早口でジェレマイアの様子を聞かされた。
 

「手短に説明する。
 今朝朝食を戻されてから、倒れると言うか、お腹を押さえてうずくまられたので、ベッドにお運びした」

「毎食きちんと、お食事は召し上がられていたのですか?」

「……領地に戻られてからずっと、食欲が奮わず、お召し上がりになられる量も減っていた。
 王都で謹慎されていた間も、あまり食事は摂られていない、と申し送りがあったので、カーターからは栄養薬が処方されていたんだが」


 これまでの説明を聞きながら、彼の案内で2階に向かうが、昔行き慣れたジェレミーの私室の前を通り過ぎ、案内されたのは、客室だった。

 知らなかった。
 父から聞いていなかった。
 ジェレマイアが奪われたのは、次期領主の地位だけではなく、住み慣れた部屋もだったなんて。


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