きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「リゼル・カーターを連れて参りました」


 動揺するリゼルを横目に、リーブスが良く通る声を張り、客室の扉をノックすれば、暫くして。
 掠れた声が返事をした。


「……入れ」




 外は晴天なのにカーテンは閉められていて、部屋の中は薄暗かった。
 伯爵家本邸の客室の調度品は豪華なはずだが、物悲しく見えた。

 そしてベッドには、上体を起こそうとする彼が居て。
 無理をさせまいと、慌ててリーブスが彼に駆け寄った。
 


 ……どうして、今ならもう大丈夫だと思えたのだろう。


 リデルはあの日、シーナ・ワトリーに言われた言葉を思い出した。
 


  ◇◇◇
 
 

「ずっとリィが手を握ってくれるなら」なんて子供のくせに、この先大人になっても側に居てもいい、みたいに言ってくれていたのに、ジェレミーは貴族のご令嬢と婚約した。


 彼とは結婚の約束などしていない。
 それ故、嘘つきなんて責められない。
 けれど、彼が婚約した事を父から聞かされた時、リデルの心は壊れた。
 だから、意地を張った。


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