きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 もう会わないと決めて、
「大丈夫、ひとりで留守番出来る」と父の職場に付いていくのは止めた。


 ジェレミーといつもおしゃべりをした本邸の庭園の片隅のベンチ。
 婚約する前と変わらずに、訓練後にそこへジェレミーは来てくれていたようだが、リデルは行くのを止めた。


 ジェレミーが王都へ出発する日も、見送らなかった。


 それでも、帰省で戻ってきた時に出会うこともあって、
「リィ、久しぶりだね、元気だった?」と変わらずに、彼は笑顔で声をかけてくる。

 
 あきらめるために接触しないでおこうとするリデルの葛藤にも気付かない、鈍感で無神経なジェレマイアの言動は、嬉しさよりも切なさがつのったので、父には
「もう若様には会いたくない」と宣言した。


 決して結ばれることの無い初恋相手を想い続けるのは、相手に知られてしまうと負担になり、優しい若様を苦しめる事になる……なんて、それは全部言い訳だった。


 会いたくて会いたくて……でも、会ってはいけないひと。 

 そのひとが今、目の前に居て、リデルに手を伸ばしている。


「……リィ……君が来てくれるなんて……
 ……やっと、会えた」  


 ジェレマイアが横たわるベッドの脇には、リーブスだって居るのに。


 伸ばされた彼の手を握ると、この世界にはお互いしか居ないような気になった。



 リデルは思い出していた。

 
 クラークから別れを告げられた日。

 彼の隣に座っていたシーナ・ワトリーが言った言葉。

 
「会えばね、やっぱり戻るでしょう?」 


 彼女の言う通り、会ってしまえば。

 やはり、気持ちは戻ってしまうのだ。

 

 今なら大丈夫なんて、もう誤魔化せない。

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