きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

9 ジェレマイア

 第2王子と共に、男爵令嬢ごときに引っ掛かって、篭絡されて。
 思惑通りに後継者から外されたのに、直ぐに領地に戻されなかったのは想定外で、王都邸での母親と半年過ごした謹慎生活はキツかった。

 
 息子が国王陛下も臨席する卒業パーティーで起こした醜聞は、それまでの学院内の問題だけで収まっていたケインやゴードンの比ではなく。
 社交界で立場が無くなった母親はヒステリー状態に陥った。
 

「ジェレマイア! 何を考えてるの!
 あんな、あんな下等な女に入れ込むなんて!
 愚かなテリオスなんかと一緒になって調子に乗って!」


 自宅内とは言え、第2王子殿下のお名前を呼び捨てにするくらい、母のイングリットは怒りに打ち震えていて。
 その顔が見られただけでも溜飲が下がって、この選択は間違いじゃなかった、と確信した。




 ジェレマイアは幼い頃から生傷が絶えなかった。
 何も知らない人間はその傷を、騎士団の訓練に参加しているからだろう、と思い込んでいた。 

 細い物で打ち据えられたようなみみず腫れ。
 それが腕にも足にも背中にもある。


 一見爽やかな好青年に見える家庭教師からの躾と称した鞭を使った虐待。
 そしてその教師を用意したのは、イングラム伯爵夫人。
 つまり、王都邸に住むジェレマイアの母親が、息子への虐待を代わりにさせていたのだ。


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