きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 ユーシスはテリオスより2歳年上の第1王子殿下で、共に王妃殿下から生まれたのだが、決して兄弟仲は良いとは言えない関係だ。


「そうだ、あちらの狙いは俺とケイン。
 低位貴族の娘には食指が動くはずがないゴードンが引っ掛かったのは、計算外だった」

「ケインは辺境伯家だから、ですか」

「あぁ、ケインは真面目で忠実な奴だ。
 学院で親しくしていた俺の支持派閥に辺境伯家が加わるのを恐れて、婿入りを阻止したかったんだろうな」


 
 ジェレマイアは、テリオスから王家の恥部なる話を聞いていた。
 そんな話を自分に聞かせてしまって良かったのかと確認すれば、テリオスは黙ったまま、いつもの計算された穏やかに見える微笑みを浮かべた。


 母の王妃殿下が偏愛しているのが兄ユーシスで、父の国王陛下が推しているのは弟のテリオスで。
 だがそれは、国王陛下が弟王子の資質を認めているから、ではない。

 単に王妃と憎しみ合っているので、何であろうと王妃の邪魔をしたいだけなんだ、とテリオスは淡々と語った。


 第1王子はもう20歳を迎えたのに、未だに立太子が叶わないのは、わざと国王がそれを先延ばしにしているからで、王妃とユーシスの派閥の忍耐も暴発寸前らしい。

 現に、テリオスは度々毒を盛られるようになったが、それを知っても国王は静観している。


 お互いに意地を張り続けて、関係を修復出来ない国王夫妻のせいでユーシスとテリオスの派閥争いが激化している現状を、代理戦争だとテリオスは嗤う。


「子供じみた意地とプライドを拗らせて、もうどうしようもない両親、はお前も同じだろ?」


 憎い伴侶に嫌がらせをするためだけに、子供を手持ちのカードのように扱う。
 テリオスの両親も、ジェレマイアの両親も同じ種類の人間だ。

 そんな親も家も捨てるには、どうすればいいか。
 鬱屈した思いに苦しかった時、同じ様に足掻くジェレマイアに気付いたのだ、とテリオスがいつもより真面目な表情を見せたから。



 ジェレマイアも覚悟を決めた。


 あれも、これもと欲張って、手にすることは出来ない。

 だったら、余計なものは捨ててしまおう。



 ただひとりを、手に入れるために。


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