きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

10 リデル

「……リィ」
 
 大人になった彼の低く掠れた声が、耳を震わせた。
 

「君が来てくれるなんて……」 

 こちらに伸ばされた、痩せてしまった腕の細さに、胸が痛んだ。


「やっと、会えた」 

 思わず差し出した手を強く握られて、身体が熱くなった。



 自分はなんて簡単で、なんてしつこい女なんだろう。


 ひと目会えただけで、その声を聞いただけで。

 また彼に恋をしてしまうなんて。 



  ◇◇◇



 だが……この胸の内をジェレマイア様に知られるわけにはいかない、とリデルは緊張して泣き出しそうになるのを我慢した。
 自分の頬が紅潮していたらどうしよう、とも思う。



 ジェレマイアは、リデルが来たので驚いていた。

 院長が仰った『リデル・カーターの看護を、ご指名』したのは、多分リーブスで、ジェレマイアではない。
 それならば、リデルは看護士の仕事を全うするだけだ。
 決して、この気持ちを気取られてはならない。


< 32 / 225 >

この作品をシェア

pagetop