きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 今でもジェレマイア様が好きだとばれてしまえば、看護士としても2度とここへは来られない。
 職務に忠実で厳格なリーブスは、ジェレマイアに懸想する身の程知らずなリデルを、絶対に排除するに違いない。

 多分……それは長年勤めている父にも影響するだろう。
 エラにだって、その可能性はある。
 彼女がリデルの友人だということは、本邸の人間なら誰だって知っている。
 もしかしたら、リデルに直接関係ないエラの御両親だって、無事では済まないかもしれない。


 優しくされたからと言って、平民の分際で貴族子息に懸想する、とはそういうことだ。
 自分の軽はずみな言動次第で、周囲の人達に迷惑をかけてしまう可能性に気が付いたリデルは、改めて自分に言い聞かせた。


 想うのは自由。
 だけど絶対に、ジェレマイア様には必要以上に近付かない。
 治療行為以外で、彼に触れたりしない。


 そう決めたリデルは治療院に来た患者に対していつもするように、握ったジェレマイアの手の甲を安心させるように2回優しく叩き、職業的な笑顔を向けた。


 

「ご無沙汰しております、ジェレマイア様。
 お加減はいかがでしょうか?」

「……」

 
 看護士らしく、とそう意識する余りに、久し振りにリデルの方から話しかけた声は、他人行儀で固いものになった。
 丁寧な言葉遣いにしたつもりだが、それが却って不敬だったのだろうか。
 さっきまで優しく微笑んでくれていたジェレマイアの表情が強ばった。


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