きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 それでも、リデルが馴れ馴れしくするわけにはいかない。
 すぐ側にはリーブスが立っていて、ジェレマイアとのやり取りを見ている。


「お食事を戻された後、お腹を押さえて倒れられた、と聞いております。
 どの辺りが、どのように、痛むのか。
 お話しくださいませ」

「……ジェレマイア様、か。
 もう俺を、ジェレミーとは呼んでくれないのか?」


 伯爵家の本邸客室で使用されているベッドは、通常のそれよりも床面から高さがある。

 
 ジェレマイアは、随分身長の高い青年に成長したのだろう。
 上体を起こして座っている状態でも、彼は側に立つリデルよりも若干低いだけなのに、何故だか彼女を見つめる眼差しは、それよりもっと下から見上げているように感じる。

 ジェレマイアのその視線が距離を取ろうとするリデルを責めているように思ってしまうのは、どこか期待してしまっているからだろうか。


「……」


 もうジェレミーと愛称で呼んでくれないのか、と尋ねられて。
 今でも呼んで構わないのですか?と返事をしたかったけれど。
 そんなことを言えるわけもなく。


 黙ったままジェレマイアに握られた手を引き抜こうとしたら、逃がすまいとするかのように、ますます強く握られた。



「ジェレマイア様、それではリデルが診察出来ません」

 流石に見かねたのか、リーブスがリデルの手を離すようにジェレマイアに注意して、彼は渋々彼女の手を解放した。


 ようやく離された右手の掌で、鼓動が激しい胸を押さえた。
 思わずとってしまった行動は自分でも不自然に思えて、それを誤魔化そうと慌ててジェレマイアに向き直ると、彼はリデルのそんな様子をじっと見ていた。

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