きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

11 リデル

 その方法を最初に教えてくれたのは、ジェレマイアだった。

 リデルに触れられると痛みが治まる、と。


「リィの手は特別だね。
 リィに手を握って貰ったり、掌で触れられると、痛いのも苦しいのも、消えてしまうんだ」



 本邸で働く父について来ているだけの何の役にも立たない子供でしかなかったのに、自分の存在意義を認めて貰えたようで嬉しかった。
 

 彼のその言葉があったから、看護士を目指した。
 看護士という資格を手にしたら、大人になってもジェレミーと一緒に居てもいいのだ、と幼いリデルは考えた。 


 いつだってジェレミーの側に居て、彼が痛い苦しいと言えば、わたしが治してあげられる、なんて……今から考えたら、どれだけ図々しい娘だったか。



 目指したきっかけが初恋の少年との会話からだった、なんて知られたら、そんな安易な理由で?と嗤われるかもしれないが。
 リデルなりに看護士の仕事に誇りを持って働いてきた。

 だからこそ、そのきっかけを作ってくれたジェレマイアの前では看護士として、ちゃんとした姿を見せたかった。


 リデルの手を離した後、リーブスに注意されたジェレマイアは大人しくシャツのボタンを外し前を広げて腹部を見せ、痛むという患部を指で指し示したので、いつものようにそこを手で触れようとして。


 通常の診察時であれば、治療士の診察処置を終えた患者の顔を見ながらその手を握って、痛みの経緯などを聞き取って、目視で確認した患部に触れる。


 病人や怪我人を看護するやり方は各自各々だろうが、リデルはそんな手順で看護にあたった。
 何故かそうすると、痛みが治まると言ってもらえたので、そのようにしていたのだが。


 
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