きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 良かった、声は震えていない、とリデルは胸をなでおろした。
 リデルが過剰に意識している事を、ジェレマイアは気付いていないようで安心した。


 しかし、こんなにも情けない姿を見せ続けるのに耐えられなくて、一刻も早くこの場から逃げ出したかった、ところが。


「いや、薬だけじゃなくて、手を当ててくれないか? 
 リィが触れてくれたら、早く治る気がするんだけど?」


 ジェレマイアを挟んで向かい側に立つリーブスの難しそうな表情とは、対照的に。
 そう言ってリデルを追い詰める上半身裸のジェレマイアの様子が、こちらの反応を楽しんでいるように見えて、それが一転してリデルの熱を冷まさせた。
 

 たまに男性で、こんなややこしい患者がいる。
 体調を悪くして受診しに来たはずなのに、対応する看護士がリデルのような若い女性だと、おかしくなる人達だ。

 肩が痛い、と事前に聞いていたのに、その場になると
「ここも痛い」と余計な所に触れさせようとする。

 それは若い男性だけに限らずお年を召した老人にも居て、そうなるとリデルは席を立ち、男性看護士に交代して貰う。
 そんな厄介な患者を思い出して、リデルは落ち着くことが出来た。



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