きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 本邸から家までの帰路の途中に、領都で1番大きな市場がある。
 これから、そこに寄り食材を調達する。


 今日から1週間、父のデイヴは騎士団の演習に同行しているから不在で、リデルはひとりだ。
 それで今週は外食や出来合いの惣菜を買って、それでしのごうと思っていたけれど、
「ひとりだからって、飯は簡単に済ますなよ」と今朝出掛ける前に父に言われたのもあって。
 
 今日はジェレマイアのせいで心身疲労させられたが、その分のご褒美のように時間が出来た。
 平日の午後の市場をゆっくり回って品定めをして買い物をして。 
 仕事で疲れて帰っても直ぐに食事が出来るように、保存がききそうなものを何品かまとめて作り置きしよう、と決めた。


 リデルは作るのも、食べるのも、食べて貰うのも、好きだ。
 料理は彼女のストレス解消にもなっている。


 食事を美味しくいただけたら。

 それで、明日からも頑張れる。



  
 1時間近くかけて、ぶらぶらと市場での買い物を楽しんで、さて帰ろうとしたリデルの肩を叩いたのは、同じボランティア部に所属していた友人で、商業科を専攻していたシェリー・オドネルだった。
 彼女は今週末、同じくボランティア部員だったマーティン・ガイルズと結婚式を挙げる。


「あら、花嫁さん。
 結婚式直前で目が回りそうな程お忙しいでしょうに、どうしてここに?」


 3ヶ月前、シェリーから結婚式の招待状を受け取った時は
『喜んで出席させていただきます』と返事を出した。
 しかし、2週間前にクラークと別れてしまったので、彼とシーナ先輩も出席する場にはどうしても参加出来ない、と挙式のわずか半月前にキャンセルさせて貰った負い目もあり、シェリーに対して普段よりも明るい声でお愛想を言ってしまうリデルだ。


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