きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

13 リデル

 まるで拉致されるように腕を取られて、リデルがシェリーに連れてこられたその店は。
 市場の外れのベーカリーに併設された、スイーツとは言えない菓子パンと薄いお茶を出す、カフェというより休憩所のような作りだが、買い物帰りの人々が疲れた足を休めることが出来る。

 ベーカリー側のカウンターで注文と会計を済ませて、番号が呼ばれたら取りに行く。
 良い意味で、お客を放置してくれる店だ。
 


 15時過ぎの店内は市場帰りの女性達でそこそこ混んでいたが、シェリーはうまく空いているテーブルを見つけて、素早く席を確保した。

 そしてテーブルに着くなり、リデルを座らせたまま1人で注文に行き、速攻で戻ってきた。
 リデルの好みは聞いてくれなかったけれど、おごってくれたのは確かなのだろう。


 ここまでの段取りが早すぎて落ち着かないリデルに、シェリーは早速本題に入った。
 

「クラークのことなんて気にしなくていいから、結婚式に来てくれない?」

「ちょっと、それは……」


 既にリデルの中では『そんなもの』であり、
『お互い元々縁が無かった』相手で、
『恨みっこ無しにしましょう』と、片付けたクラークだが。

 彼に向かって言い捨てた通り恨む程の熱量は無いが、会いたくないのは確かで、気にしなくてもいい存在とまでは、まだなっていない。

 それに、結婚式にはあのシーナ・ワトリーだって来る。
『あんた達お似合い』とは言ったが、ふたりが一緒にいる姿は正直見たくない。



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