きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 リデル自身が着飾る事にそれ程興味がないので、流行りの服は持っていない。
 お金が無いわけではないが、仕事もあるし、今週末の結婚式に間に合うように、買いに行く時間もない。

 肌触りの良い、飽きのこない、質のいいもの、そんな基準で洋服を選ぶと、どうしてもベーシックで、どれもが似たような代わり映えしない地味な服になる。
 シェリーの結婚式に着ていこうと予定していたワンピースも、リデルの中では一張羅だが、流行りのデザインではない。



「ドレスは、リデルにこだわりが無ければ……
 良かったら、わたしが仕立てたドレスを着て貰えない?
 披露宴で着たくて縫ったんだけど、お義母さんが素人が作ったドレスなんて恥ずかしいから止めて、って」

 
 シェリーが1針1針に心を込めて縫い上げたドレスを、そんな風に言うなんて!
 これはチクチクどころじゃない。
 グサリと刺しに来てる。
 愛するマーティンの母親だとしても、そんな事を言われて、よく彼女は我慢したと思う。


「シェリー……あなた大丈夫?
 マーティンのお母さんと上手くやっていける?」

「ええ、大丈夫。
 心配させてごめんね?
 それより、そんな素人が作ったドレスだけど、リデルに着て貰えたら、少しは報われる気がするの。
 やっぱり、無理?」


 シェリーは義母とのこれからについては、余り語りたくないようだ。
 ガイルズ家の嫁姑関係について、リデルにはどうすることも出来ないが、無意識に目の前に座る彼女の手を握っていた。


< 48 / 225 >

この作品をシェア

pagetop