きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 これまでシェリーとは専攻も違っていて、部活動の時だけのお付き合いだった。
 今日初めてふたりきりで、こんなにも長く話してみて。
 

 シェリー・オドネルは意外にも口が悪くて、そのくせ小説みたいな展開を夢見てる。
 入学当初から付き合っていたマーティンから大事にされて、いつも笑っているお嬢さんに見えていたのに、彼女はその微笑みで色んなものを隠していた。



「もうすぐ花嫁になるひとが、そんな顔をしてちゃ駄目だよ」


 本当なら今が1番忙しくて、幸せな時間なのに。 
 もうすぐ花嫁になるひとに、こんな顔をさせちゃ駄目だ。


 ただ、手を握るしか出来ないリデルだが。 


 リデルが手を握ってくれるなら、どんなことも我慢出来る、と少年だった彼は言ってくれた。 


 もしそれが本当なら。
 わたしが手を握ることで、少しでもシェリーの頑張りが楽になるのなら。



 目を閉じて、それを受け入れたシェリーは、小さな声で
「高い治癒力で有名な看護士さんに、無料で手を握って貰えるなんて、得した」と照れたように笑った。


 リゼルに向けたその笑顔は、それまで見せていたものより、本物に見えた。


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