きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 幼い頃から貴族学院入学前の12歳まで、ジェレマイアを見てきた。
 騎士団医療部の治療士デイヴはイングラム本邸で毎日勤務しているが、怪我人や病人が出ない限り駆り出されることはなく、その勤務時間の大方は待機状態であった。

 それ故5歳を過ぎてから騎士団の基礎訓練に混ざるようになり、毎日小さな身体に小さな傷を負うようになったジェレマイアの治療に当たる事が増え、自然と若様との交流が始まって、その為人も知るようになった。

 つまり、婚約者が出来、思春期を迎え、王都邸で生活するようになったジェレマイアとは、彼が帰省する夏と年越しの年に2回顔を合わせるだけとなってしまったが、その時に交わした言葉や様子からは、簡単に誘惑されて乗ってしまうような徴候は見られなかった。

 何より、噂によると。
 その女生徒にはジェレマイアと第2王子以外にも相手が居て、学院の高位貴族令息達の何人かで共有していた、という。


 そんな馬鹿な話があるか、と思う。


 婚約者以外に心を奪われたのが、ただひとりの相愛の女性だったなら、渋々受け入れられた話だが。


 何人もの男と、身持ちの悪い1人の女を共有?
 有り得ない。
 どうしてそんな話になる?


 
 デイヴは、他に話題を変えたエラに適当に相槌を打ちながら、思う。


 もし、ジェレミー様に婚約していたカートライト伯爵令嬢以外の『ただひとり』が居るのなら。
 
 それは、娘のリデル以外に有り得ないだろうに、と。


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