きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

15 エラ

 看護士のエラが初めて同行したイングラム私設騎士団の冬季軍事演習は、当初の予定より2日早く終了した。
 それは悪天候の場合も想定して、演習スケジュールに余裕を持たせて組んでいたからだが、今季の演習は全日天候に恵まれて、全行程が恙無く完遂出来た。
 
 演習に見学参加していた領主のイングラム伯爵は本邸への帰還途中で隊から外れて、広大な伯爵家敷地内で本邸とは反対側に建てられた、愛人と娘が住む別邸へ向かった。

 伯爵は元々本邸よりも別邸で過ごす方が多かったが、ジェレマイアが戻ってきてからは、それはより顕著になった。
 わずかな時間でも、息子と顔を合わせたくないのを隠しもしないその行動に、エラは内心呆れている。 


 5日ぶりに本邸に帰還した後、冬季演習限定で編成された騎士隊の解隊式は、隊長である領主欠席の為、騎士団長の挨拶で締められ、週末の2日間は全員休暇となった。
 初めての演習に滅多な事では動じないタイプのエラも流石に緊張していたので、解隊式が済めばさっさと帰りたかった。

 ところが医療部が留守の間に、ジェレマイア様が倒れられたと報告があり、南地区の看護士を呼んで受診したと聞くなり、デイヴの様子が変わった。

 そしてそのまま、今のところ謹慎部屋にされている客室へ突入したので、彼女も職務上仕方なく付いていった。
 それは、デイヴがジェレマイアの体調を確認しに行ったのだと思ったからだ。


 だが、デイブが確認しに行ったのは、ジェレマイアの体調ではなく、診察に来た看護士が誰なのか、だった。
 いきなり飛び込んできたデイブに、誤魔化せないと悟ったジェレマイアは開き直ることにしたようだ。


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