きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「遠征中に倒れられたそうですが、看護士を呼んだとか?」

「そうだ、リデルだよ、リデルに来て貰って……
 胃薬も出して貰ったから!
 はい!もうこの通り!元気になった!」

「……私は貴方に、遊びでリデルには近付かないで欲しい、とお願いしましたよね?
 お忘れですか?」 


 勢いを付けて駆け込んで来た割りに、ジェレマイアに問うデイヴの声が、いつもより静かなのは怒りを抑えているからだと明らかに分かる。

 エラにも分かるくらいなので、付き合いの長いジェレマイアには、当然だろう。
 彼の返事は自然と小さな音量になっていた。



「……忘れてない。
 デイヴ、遊びなんかじゃ……」

「忘れておられないのなら、くれぐれもお願いします。
 ……ところで、お元気になられたようで安心致しました」



 デイヴさん、リデルと元若様の事、反対してるんだ……とそこで初めてエラは知った。
 恐らく、遊びなんかじゃない、と言いたかったジェレマイアの言葉を、不敬にも途中で遮ったからだ。


 取り敢えず愛娘に対しての釘を刺せれば、それだけで良かったのか、デイヴは頭を切り替えてジェレマイアに体調について尋ねていた。
 ジェレマイアもそれに合わせ、食欲も戻り胃痛も減ってきている、と素直に答えている。


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