きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「リデルの友達のエラ・ケールだっけ。
 君も、もう帰っていいよ、ご苦労だった。
 帰りに馬車を使うなら、俺が許可したと下男に出して貰ってくれ」


 若様だったジェレマイアが、デイヴの付属品のような自分の家名まで呼んでくれた事、演習の帰りで疲れているから馬車を使っていいと気遣ってくれた事に、エラは驚いた。

 リデルの友人だと知っているからだとしても、これは15点加点してあげてもいい、と心の中で元若様を褒めた。
 それで、つい。



「騎士団に父が居ますから、一緒に帰ります。
 馬車は結構です、お気遣いありがとうございます。
 ……明日、リデルと会います」

「……」


 一言を添えて、御礼を申し上げれば。

 初めてジェレマイアがエラを、ちゃんと見た。



「……何か、お伝えすること、ありますか?」

「リデルに伝言してくれる、ってこと?
 君は反対しないのか?」

「正直に言わせていただきますと、わたしはジェレマイア様ではなく、リデルに反対しない、でしょうか」

「……」

「ですから、今回ご伝言をお預かりしても、リデルがそれを望まないなら、これきりです。
 2度とこちらから声を掛ける事は致しません」



 ジェレマイアのためにではなく、リデルが望む事ならば、反対はしない。


 エラははっきり、そう伝えた。

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