きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「今回のドレスは冬生地だよね?
 春夏のお式には、着れないよ?
 それにさ、リデルの方がシェリーより身長もあって、痩せてる。
 その辺は当日に早く式場入りさせて、調整するんでしょうけど。
 で、何色のドレスなの?」

「……薄めのラベンダー、形は、えー……」

「実物はまだ見てないんだね……」

「……」


 エラのもっともな意見に、リデルには返す言葉もない。
 色は薄いラベンダーだとシェリーが言っていたが、具体的なデザインまでは聞いていない。


 リデルは黒髪で茶色の瞳の持ち主だ。
 エラの指摘通り、金髪碧眼のシェリーが自分のために選んだ色とデザインが、持っている色も体型も違う自分に似合うとは思えなくなってきた。

 

 そんな不安にかられたリデルの様子に、エラは気付いていないのか、急に帰ると言い出した。


 まだ、デザートだって出してない。 
 久しぶりに会えたのに。
 こんなに早く帰るなんて、思ってなかった。


 似合うかどうかもわからないドレスを買うようなリデルに呆れて、話に付き合うのが馬鹿馬鹿しくなって、エラは帰るのだろうか。
 


「ごめんね、急に用事を思い出したの。
 結婚式は午後からだったよね?
 明日の朝リデルが出掛ける前に、絶対に顔を出すから。
 わたしが来るまで、待ってて」

 呆然としながらも、見送ろうとしたリデルを抱き締めて、エラが謝った。


 エラが急に言い出したその用事が、まずシェリーの店に行き、リデルに着せる予定のドレスを預かって。

 それからジェレマイアに会う事だとは、リデルは知らなかった。

 
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