きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

17 ジェレマイア

 中等部入学時に同じクラスになったテリオスとは、実験班が一緒になって。
 テリオス直々の指名で、彼の取り巻きに加えられたジェレマイアだった。

 
 王族と公侯爵家の令息達で構成される貴族学院のヒエラルキーの頂点に加わることになって戸惑う伯爵家のジェレマイアに、テリオス本人も早く馴染めるように気を回したのか、ジェレミーと愛称で呼び掛けられたが、それが嫌だと顔に出たのだろう。
 テリオスは直ぐに訂正した。


「いや、ジェレミーはやめた。
 お前の事はマイアと呼ぼう」


 
 ジェレマイアは王子殿下であろうと、ジェレミーとは呼ばれたくなかった。
 その名を呼ぶのは、限られた……特別なひとだけでいい。


 テリオスがそんな他人の機微に素早く気がつく所は、ジェレマイアも気に入ったが。
 彼にとって聖地であるイングラムから離れた、こんな嘘ばかりの場所で知り合った奴には、ジェレミーとは呼ばれたくなかった。


 いや、他の誰にも呼ばすものか。



 ◇◇◇


 
 胃痛で食欲の無いジェレマイアを元気付けるため、リーブスの尽力で往診に来てくれたリデルを、彼は逃がしてしまった。

 
 ジェレミーと呼んでくれなかったのは、寂しかったが。
 久しぶりに会えて、顔が見られて、言葉を交わし、手を握った喜びに。
 馬鹿な男が、距離感を間違えてしまった結果だ。 


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