きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 上衣を脱いだのも、純粋に痛む患部に触れて貰ったら、楽になると思ったからで。
 リデルが思い込んでしまったように、からかいや遊びでは決して無かった。

 だが、結果として。
 急にすんっとなったリデルは帰ってしまい、会えなかった時よりも今の方が喪失感は大きい。


 リーブスからも、しつこく手を握って離さなかった事、気持ち悪いくらいに見つめ続けていた事、何より言われてもいないのに勝手に上半身裸になった事を責められ、ジェレマイアは酷く落ち込んだ。


「貴方がそれ程、女性の扱いに慣れていないとは。
 王都に6年もいて、少しもラブアフェアを経験していないんですか?」
 
「そんなもん、するかよ……」


 ラブアフェアなんて1度でもしたら、身体が汚れると思った。
 身体が汚れてしまったら、リデルを想う自分の心も汚れると思った。


 王都は街で、学院で、女性と知り合う機会も多い。
 誘いは確かに何度もあった。 
 
 ちょっと年上から、うんと年上まで。
 だが全部婚約者の名前を出し、彼女が怖い情けない男のふりをして逃げた。


 それが1番しつこくされない方法で、アリシア嬢を便利に使わせて貰った。
 だからこそ、卒業後王都を離れるまで、婚約解消をする気がなかった自分勝手なジェレマイアだった。


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