きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

3 リデル

 結局、父にはクラークと別れたことは話せなかった。 
 

 領地で謹慎処分となったジェレマイアの帰還を聞いて、そんなものは飛んでいってしまった。

 
 そんなもの扱いしてしまった元恋人には申し訳ないけれど、もう関係ない相手だ。
 だって、クラークが言ったのだ。


「お前が悪いんだよ、思ってたのと違うんだからな」



 クラークからお前なんて言われたのは初めてだった。
 知り合ってからずっと、名前や君と呼び掛けられていたのに、お前なんて偉そうに言われた。

 クラークにとって、別れる女はどう扱ったっていいんだ。
 そんな風にリデルは解釈した。



  ◇◇◇



 それは昨日、クラークと最後に会った日。
 お迎え無しで、カフェで待ち合わせしたクラークの隣には、リデルも仲が良かった先輩のシーナ・ワトリーが座っていた。


 今日は会う前から別れ話になるかも、とは覚悟していた。
 クラークが他の女性と会ってるみたい、と友人のエラ・ケールから聞かされたからだ。


 別れ話がややこしい展開になるのを、彼は恐れているのだろうか。
 シーナ先輩を同席させたくらいに。
 何故なら、彼女はふたり共通の先輩だったから。
「別れたくない」とごねるリデルの説得要員として、同席をお願いしたのだろうか。

 それでも、この場に無関係な人を呼ぶのは違う気がして。


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