きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 攻略されたことになっているミネルヴァ・ロバーツには、ただ皆の前でプレゼントを何品か渡しただけだ。
 入学してから誰1人として女生徒を近寄らせなかったジェレマイア・コートが、特定の女性にプレゼント攻勢をする、ただそれだけで彼女に堕ちた、と見なして貰えた。


 実際は、ミネルヴァにはキスは勿論のこと、抱き締めたり手を繋ぐなど身体の接触は何ひとつ許していない。
 それでも、今以上にそれ風に思い込ませようと、似たような感じでミネルヴァに夢中だと見なされていたテリオスが提案したのは、学院内の王族専用特別室にミネルヴァを連れ込む事だった。

 

「連れ込んで、するのに、私は参加しませんからね」

「そんなもん、するかよ」

 ジェレマイアがリーブスに言った台詞を、この時テリオスも口にした。



「催眠術をかけようと思ってる。
 俺達とそんな関係になった、とあれに記憶を植え付ける」

「催眠術って、殿下が本を読んで、試したくなっただけでしょう」


 案の定、ミネルヴァはテリオスの拙い催眠術にはかからなかった。
 仕方がないので、3人で楽しんでいると思わせるために、時間を掛けてカードを5ゲームして。
 別れ際に、甘く微笑むテリオスに頭を撫でられて髪を少し乱されたミネルヴァを、特別室から追い出した。


 艶やかな花達が競う王都でジェレマイアが経験した女性とのゲームは、恋愛ゲームではなく、そのカードゲームのただ1度きりだ。


 ジェレマイアの持つ容姿と財力と将来性に関係を繋げたいと希望する女性は多くいたが、彼自身はそんな事には興味を持たずに、ここまで来てしまったので。
 いざ肝心のリデルに関しては、どうしたら良いのか、全く分からなくなっていた。


 仲が良かった子供の頃のように接したら、逃げられてしまったのだ。
 一体、どうしろと言うのか。


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