きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 その時間と労力をかけたリデルの姿は、ようやく入室を許された父の
「え、え、リデルが、お前……それ……」と口ごもった反応が、普段のデイヴを知る本邸勤務の彼女達に笑われたことで、それまで鏡をちゃんと見れていなかったリデルにも知ることが出来た。
 

 その笑いと、やり遂げた達成感が落ち着いた頃。
 エラが小さな箱をリデルに差し出した。


「最後の仕上げは、これを髪に飾るの」


 ドレスだけではなく、靴もコートもエラは借りてきてくれた。
 エルザの手で複雑にピンで止められ綺麗に結い上げられた髪は、それだけで充分だったのに、髪飾りまで。
 どこまでエラは、わたしに……と泣きそうになりながら、それを受け取れば。


 それは伯爵家本邸にしか咲かない白いビオラ。
 決して、使用人のエルザやエラが主に黙って勝手に持ち出すことは許されない。


 リデルは唇を噛んで、その花弁にそっと触れた。  
 


 この白い花に触れるのは、何年ぶりだろう。 


 ……わたしの隣に居て、似合うと言って、髪に挿してくれた彼は。



「それはね、表立っては渡せないひとからのリデルへのプレゼント。
 ……受け取ってあげてくれる?」


 リデルは黙って頷き、鏡の前に座り。

 エルザが髪にその花を、細心の注意を払って丁寧に挿し込んでくれるのを待った。
 
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