きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 改めて確認されたクラークがかくかくと何度も頷くと、父は舌打ちをして、手を離した。


「もう少し、お前は頭が回る奴だと思っていたが。
 フローに婿を取ってもいいな」 


 まるで落とされるように襟から手を外されて。
 堪らず床に座り込んだクラークに、父は目もくれずに、それを捨て台詞にしてダイニングルームを出ていく。


 父はリデルの事をカーターの娘、と2回繰り返した。
 それがさも、重要な事であるかのように。
 

 そしてそれが、クラークを不安にさせた。
 デイヴ・カーターの娘であるリデルと別れた事は、こんなに父の怒りを買い、失望させることなのか?


 そう考え項垂れるクラークに、呆れた様子の母が声を掛けた。


「お父様は貴方とリデルの結婚で本邸の治療士の父親と親戚になって、騎士団の仕事を貰おうとしてたのよ。
 そしてそれを足掛かりにして、行く行くは貴方の代には本邸御用達の看板もあり得るだろう、と考えていらっしゃったのに」


 少し前まで母は父の事を『父さん』と言っていたのに、いつの間にか『お父様』と呼ぶようになり、お上品ぶるようになった。

 それはもしかしたら、クラークがリデルと交際を始めた半年前くらいからだったかもしれない。
 父と共に、ご領主様御用達の夢が現実に近付いた、と思っていたからだったのか。 

 そんな事は聞いていない。
 教えてくれていたら。



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