きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 彼女が学生の頃から今まで、いつも着ている冬物のコートは紺色で、卒業して稼いでいるんだから、そのコートからも卒業しろよ、と内心お洒落に関心がないリデルに呆れていた。

 クラークは女性物の衣料も扱うライナー商会の跡取りだったから、その気になればいくらでもリデルに、最新のコートを贈れたのに。
 彼の父親が渡してくれていたリデルのための小遣いは、少しも彼女に使われていなかった。
 いや、それはお金の問題ではなく、クラークの気持ちさえあれば、の話なのだが。


 まさかまさかと思いつつ、リデルの他に仲間内で黒髪は居たか、と記憶をたどりつつ。
 披露宴会場で指定された席の隣に、先に座っていたのはやはり、さっきの黒髪の……


 俺と別れて、たった半月で、こんなに変わるなんて。
 勝手なことに、裏切られたような、騙されたような気にもなって。
 思わず焦って、掛ける言葉もスムーズに出てこない。


「リ、リデル……ひさしぶり……」

「そうね、久しぶりね。
 お元気でした?」


 艶やかに紅を引かれた唇の広角が上がり、リデルが微笑んだ。
 ふわっといい匂いもして、くらくらした。


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