きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「お前が妻子持ちと付き合っているのは、うちの家族全員が知ってるからな。
 結婚なんて出来るわけない」


 その一言をシーナにぶつけて、クラークは行ってしまった。




 思春期を迎えた頃から、シーナの容姿は異常なくらい異性にもてはやされるようになった。
 そして、その分。
 同じ量で、同性から嫌われるようになった。


 職場で、専門高等学園で、商学科で、ボランティア部で。
 同性の友人は出来ず、ただの顔見知りで終わる。
 当然、若い世代が集まる婚約パーティーや結婚式に呼ばれることはない。
 皆、恋人をシーナに奪われるのを恐れている。 


 唯一の例外が例の後輩、シェリー・オドネルで。
 シーナは週末の彼女とマーティン・ガイルズの結婚式に招待されていた。

 実は彼等が2年生だった頃、クラークと喧嘩して距離が出来ていた時に寂し過ぎて、マーティンを誘ったことがある。
 後輩の彼氏を寝取ったのは褒められた事ではないが、たった一度きりだ。
 ふたりに対して罪悪感は無くて、シェリーとは今も普通に付き合えていた。


「やっぱりキャンセルさせてくれる?
 今はクラークにも、リデルにも会いたくないし」

「まぁまぁ、そんな事言わずに来てください。
 今は誰とも付き合っていないんですよね?
 マーティンの従兄弟は、なかなか素敵ですよ」


 花婿と寝た女に、彼の従兄弟を薦めるシェリーの微笑みは、あの事がばれていないからだと分かっていても、愚かに見えた。


「お洒落して、来てくださいね?
 それを見たクラークがもう遅い、って後悔するくらいに。
 で、素敵な従兄弟と仲良くしてるところを見せつけてやるんです」


 
< 86 / 225 >

この作品をシェア

pagetop