きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
 このまま黙って別れを受け入れて、去るのもよかった。

 だけど、可愛げがないと言われたのだ。

 シーナの前で、ぶっちゃけても良いだろう。


「わたしがあんたの思っていたのと違う、と言うのはあれの事でしょう。
 わたしがまだまだと、受け入れなかったから」


『お前』と言われたお返しに、初めて『あんた』と言ってやったら、案の定クラークは睨んできた。


「何度も君が欲しい、欲しいとお願いされるから、断るのが大変だった。
 先輩とのお付き合いでは、それが当たり前だったんでしょうけど、盛りがついた動物みたい、って思ってた。
 そう言うわけで、手近に居たから、と簡単に手なんか出させませんでしたけど?」

「お、お前!」


 3人が向かい合っているのは、領都で人気のカフェだ。
 流行りが好きなクラークは、別れ話をするのも、そんな店を選んだ。

 若い女性客が多く寛いでいるこの場で、目立つ容姿をしたクラークが大声を出したので。
 それでなくても、男ひとりで女ふたりと同席しているのは、修羅場になりそうな場面でもあったのに。
 
 感情に任せて怒鳴ったクラークと、簡単にと言われて羞恥に赤く染まったシーナ。
 平民であろうと、結婚前に純潔を守るのは当然とされている。
 そして立ち上がったリデルは、周囲から注目されていた。




「お似合いね、あんた達」


 注文したお茶には手をつけていない。
 その代金をテーブルの上に置く。


「わたしをお前と呼んでいいのは、父だけなの。
 クラーク、あんたもわたしが思っていたのと違う。
 それはお互い様だから、元々縁が無かった、と恨みっこ無しにしましょう」


 それだけ言って、リデルは店を出た。

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