きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
「いい女は、いつまでも残ったりせず、誰よりも先に帰るの。
 余韻を残すのは、大事」
 
 ドレスのフィッティング担当のレイカに、出掛ける前にリデルは教えられた。
 そんな勝手な事を、いい女達はいつもしているのだろうか。
 そこに加わったのが、エラの母エルザだ。


「大丈夫、大丈夫。
 綺麗な女が多少失礼な事をしても大抵は、仕方ない、で許されるものよ」

「……わかりました」


 今まで、いい女や綺麗な女になった事がないリデルには理解不能なルールが存在するらしい。
 その道の先輩方が言うことは素直に聞く彼女は、ジョイス先輩とその向こうに座っているキャロルに声を掛けて、席を立った。
 それはエラと約束した、迎えの馬車が到着する時間から逆算しての行動だ。


 クラークには挨拶は要らない、と特に何も言わずに立ったリデルに、慌てて彼も立ち上がる。


「君は、もう帰るの?」



< 91 / 225 >

この作品をシェア

pagetop